再録 Contax Sonner T*35mm F2.8 on Contax T3
ノリが悪いってのは、具体的にどういう心理状態なのだろうなぁ。そう思いつつ、今夜も再録モノでお茶を濁します(^^ゞ
以下、再掲です。
優秀レンズである。ツアイスユーザーも誉める。ただ私はこのレンズに対して疑問を持っているのだった。写り過ぎなのではないかと。
たとえばG用のプラナー45mmは、写り過ぎるという印象はまったくない。高度にバランスが取れている感じで、上品さと優雅さを優先させたように受け取れる。
けれどT3のゾナーはシャープすぎる。硬い写りの印象がある。こういった写りが一般的に好まれるのだとすると納得できるが、ツアイスらしいかどうかとなると、いったいどんなもんなのかなと感じる。
以前、東京で開催された某OFF会に参加した際、私はクルクル針クラブの主宰という立場で出席したこともあり、とりあえずニッコールマンセーの姿勢であった。
古くからあるニッコールレンズが素晴らしい写りだとは今でも思っていないが、十二分に個性のある写りは私の好む傾向だった。
ベトナム戦争で全世界にその名を高めたニッコール伝説の影響が残る世代であるから、なおさらニッコールの存在感は大きかった。
ニコンF4を購入しようとして私が貯金を始めたのも、ニッコールレンズの硬さが欲しかったからである。カラーバランスが悪いことは承知の上であったのだ。キヤノンNFDの優等生的80点主義に疑問を感じ、個性が欲しかったのである。
OFF会に出席した当時は、ツアイスにそれほどの価値を感じていなかった頃で、自分で使ったことはなかった。せいぜい京セラスリムTに搭載されるテッサーくらいのもんであったよ。
私を招いてくれたokuraさんは全面的なニッコール野郎であったので、二人でニッコール話に花を咲かせたものであったけれど、他の出席者が、それまでEOSやらミノルタやらを使っていたはずなのに、いつの間にかツアイス全面礼賛者になっていた。
十数人の出席者の中で、キヤノン組が2名、ニッコール野郎が2名、あとはツアイス人間と化していた。
なぜにツァイスなのかといえば、色乗りが違うと皆さん口を揃えておっしゃる。フジのRVPが全盛の頃なので、今にして思えば仕方ない傾向なのかもしれないが、酒席において私はokuraさんとニッコールについて傷の舐めあいをするしかなかったのであった。
クルクル針クラブ初期のユーザーアンケートにおいても、レンズに求める第一要素は色乗りであった。とするなら、正直な話、あっさり傾向の35Ti/28Tiはユーザーの期待に応えていないことになる。
現在の私はGシリーズだけとはいえツアイスを使っているわけだが、そんな私の感覚からして、ツアイスというのは色乗りするレンズだとは思っていない。
言い方を換えれば、色乗りする傾向のレンズもあるが、色乗りよりも色分離がしっかりしている印象のほうが強い。
色乗りを求めるユーザーの声に応え、前作T2の、時には破綻のある描写への反省を織り交ぜると、こんな具合の写りになるのか。それがT3ゾナーなのかもしれない。
一見、ツアイスというよりも、一眼レフレンズの高級仕様レンズ、たとえばキヤノンならL、ミノルタならGレンズのようなキレと色ノリを見せる時があるT3のレンズなのだ。
冒頭にも書いたけれど、T3のゾナーは硬い。シャドーの締まりが顕著なためだろうか、シャープというよりも硬い印象が先に出る。
おそらく第一印象は誰でも「お、けっこうしっかり写ってるなぁ」ではないかと思う。そのくらいに見た目はいい。
コンタGシリーズレンズでいえば、ビオゴン28mmの写りに似たものはある。ビオゴン28mmとの違いは、レンズそのものの寸法、すなわちコンパクトカメラに内蔵されたレンズであるという制約によるものだろうか。
しかし使いにくいというレンズではない。コダックEBXを装填して使ってみても、破綻しないだけの懐の深さがある。一般的にいいレンズという噂があるレンズにありがちな、派手なフィルムを苦手とする傾向が感じられないのである。
そして感心するのは、1m以内の撮影距離における写りである。35cmまで近寄れるAF性能を、そのままツアイスのノリで写せてしまう。
まさかとは思うが、最短撮影距離がもっとも性能が良く、そのまま遠距離までなだらかに特性が低下していくのではないか。そんな印象を持ってしまうほど、近距離におけるメリハリがいい。
一般的に撮影レンズというものは近距離において性能が低下するものであるのに、このゾナーはそんな傾向が感じられないのである。コンパクトカメラに搭載されるレンズとして、ユーザーの身の回りを写すという前提ならば、かなり満足のいく写りをするのだ。
カメラボディ側に対する不満と金欠から私はT3Dを手放したが、プログラムAEで身の回りをスナップする目的に、これほど贅沢なレンズもないだろうと思う。
ツアイス的上品さはあまり感じられない写りながら、色乗りとシャープさではなかなかのものだ。
ただし、気になる人は歪曲が気になるかもしれない。故に生活スナップ用の贅沢カメラというポジションに収まってしまう。
そのへんがちょっともったいない気はする。もう少し気合を入れたレンズのシェイプアップと、ボディ側の操作性改善があったなら、たぶん支持するユーザーはもっと多かったろうに。(2004,07,17)<BR>
以上、再掲分です。
なんやかんやと好きに書いてはおりますが、今でもたまにT3を使いたくなる気持ちがあるのは、やはり手放したのを惜しんでるのでしょうなぁ。
しょうがないのよ。再就職活動期間は生き地獄の金欠でしたのでねえ。売れ線からオクに流すしかなかったのですよ。
シンプルな中にポルシェデザインっぽいラインがあるボディ。しっとりとした黒ボディ。外装で唯一残念なのは、後付フード用の切り欠きが思いっきり存在感を主張していることと、あまりにも小さく安っぽいコマンドダイヤルですね。
常時携帯銀塩機としては稀有な万能性がありますんでね、リバーサルを入れてもオッケーのコンパクト機の中では最右翼の存在ですな。
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コメント
コンタックスは何気にボディのデザインが良い。
私の所有機でもRTS(初代)コンタG
どっちもとてもカッコイイデザインです。
で、実はレンズもやる!
残念ながらめーかーとしてはなくなっちゃったけど。
侮りがたい実力でしたね。
Tシリーズは興味があったけど縁がなかったなぁ。
T2とかT3はヘキサーと迷ったんだよなぁ。
投稿: ぴゅんぴゅん | 2010年3月18日 (木) 22:26
思い返せば、ぼくも同じような理由でT3を手放したんでした。
ぼくは、あのシャッターボタンの半押しの感触がどうにも好きになれませんした。
手放した時は、ちょうど生産が終わってプレミアがついた時と重なり、
珍しく購入価格を上回る値で売れましたっけ。
もう一度使いたいという気にはならないなぁ・・・
そういう意味では、Hexarはもう一回真面目に使ってみたいかなぁ。
自分でも不思議なのは、なんでここまでKlasseWを使い続けているかです。
決して写りは好みでは無いんですけどね。GR1の方が全然好きなんだけど?
投稿: Kizao | 2010年3月19日 (金) 21:57
> ぴゅんぴゅんさん
ヘキサーとT3ってw
両立できる存在ではないかと思いますよ。カメラのキャラが
まったく違いますんで。
ただ併用するほどたくさん撮れるのかといえば・・・。私は無理w
> Kizaoさん
そういえばシャッターの感触があまりよろしくなかった
ですねえ。すっかり忘れてました。
でも半径1.5m内を撮るには、しっかり写るしAFもよく合う
記憶がありましてね。黒ボディをもう一度使ってみたいと
思うことがあります。
35mmレンズはもう使いこなせないかな・・・・。
クラッセWは「深い」ということでしょうか?
投稿: ビヨ | 2010年3月20日 (土) 19:53