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キスカ その1

 旧ほんたわで樋口季一郎について触れた時に出てきた「キスカ撤退作戦」について本日は少々。
 どうしても一度はきっちり書いてみたかったネタなのですよ。ミリオタ魂炸裂の内容だとしても、読者のみなさんがすっかり引いてしまったとしても、どうしても書いてみたかったんです。キスカといっても防虫剤のキスカではありませんよ。

 いわゆる太平洋戦争で、GNP比10倍以上の大工業国へケンカを売った、後進軍事農業国の決断の是非はとりあえず置いておくとして。キスカ撤退作戦のバックグラウントについて手短に解説します。

 まずはキスカ島の位置について。

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 Googleの地図で「キスカ島」で検索した結果がAの位置。アリューシャン列島のうちのひとつです。旧ソ連とアラスカの間に点在する諸島がアリューシャン列島。
 アザラシの毛皮を求める業者や、少数の漁民しか住んでいない不毛の地であり、年がら年中暴風と霧に閉ざされた気候。

 日米間の主戦場である中太平洋~南太平洋とはまったくかけ離れた地域に、なぜ日本軍がいたのか。
 ひとつには、ミッドウェイ作戦の支作戦として陽動を狙って上陸した、というのがあります。日本軍はこの方面に興味を持っていますよという目くらましですね。現実には暗号解読により米軍にバレバレだったわけですが。

 米国領であるアリューシャン列島を占領することの意義もありました。米国本土の一部であるという意識が当時はありましたんで、なんぼ不毛の地であっても占領する意味はあったわけです。
 早期講和を狙っていた日本としては、米国の嫌がるところへあえて進出して決戦を強要する方策を取っていました。
 実際には決戦などしても生産力に優れる米国はしつこく戦うに決まっていて、決戦だと思ってるのは日本側だけだったのですけども。

 こういった決戦思想は、日露戦争における日本海海戦でのほぼ完全勝利が影響しています。大きな海戦で勝てば、それが戦争の勝敗決定に王手となる。そういった思想が日本海軍には色濃く残っていたわけです。
 戦略的に占領しても仕方ないミッドウェイ島へあえて攻勢をしかけたミッドウェイ作戦も、真珠湾攻撃で討ち漏らした米空母を誘き出すことが目的であったともいいますが、これも決戦思想が根底にある話でしょう。

 戦艦は真珠湾で潰したから、残るは空母のみ。南方のソロモン海域で潰した空母の残りを米軍は投入してくるはずだから、それを潰せば米軍は大型艦が皆無になって海軍戦力枯渇になるはずだと。それで王手だと思っていたんですな。
 実際には真珠湾で完全廃棄状態になった戦艦はアリゾナ1隻のみであり、ソロモン海域で潰したと思っていた空母ヨークタウンは、米国の突貫工事でミッドウェイ海域に出撃してくるわけですが。

 当時の日本機動部隊は史上最強といってもいい戦力であったのは事実です。的確な場面と地域に投入していたら、史実よりも米軍は窮地に追い込まれていたのも簡単に推測できることです。
 ただ日本海軍は慢心してしまっていました。第1機動部隊を押し出せば勝てない戦はないと。
 ミッドウェイを占領しても、あまりに遠いので補給できない。そうクレームをつけた担当部隊の指揮官に、じゃあ他の部隊にやらせるからいいよ!と啖呵を切った大本営の参謀さん。
 「その部隊ができないからウチに補給任務を回そうとしてたんじゃねえの?」と素朴な怒りを抱いた感覚は、当時の上層部がいかに官僚化していたの証左でもあるわけですが。

 結果的にミッドウェイ作戦は、その計画と実行の杜撰さから日本海軍のボロ負けに終わり、戦局のターニングポイントともされるほど大きな敗北でしたが、アリューシャン列島に上陸してしまった兵力はそのまま駐留することになりました。

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 日本軍はアッツ島が陸軍兵力メイン、キスカ島が海軍陸戦隊メインで占領することになりました。
 米軍はすぐに上陸されたことを察知し、アラスカに近いダッチハーバーから長距離爆撃を開始します。近くのアダック島に航空基地を設営し、晴れればすぐ爆撃しに行く体制を整え、付近海域には有力な艦隊を常駐させます。

 上陸した日本軍はしょせん孤島の守備隊でしかなく、補給手段を奪えば弱体化していくことをよく知っていたからですね。当時の日本の弱点である補給の貧弱さを攻めたわけです。
 日本海軍も艦隊を派遣したりしてみましたが、なにやら煮え切らないような戦闘でお茶を濁しておしまい。
 米軍よりも海軍勢力が劣勢だという意識が海軍関係者の頭の中に染み付いており、被害を受けないようにと腰の引けた戦闘をする指揮官が多かったのですよ。
 輸送船補給は危険だとなって潜水艦での補給も試みましたが、霧の中での戦いではレーダーを持たない技術後進国の悲しさ。いきなり砲撃を喰らったりして、どうにもうまくいきません。

 やがて戦局は明らかに日本へ不利に傾き、陽動作戦として占領したアッツとキスカの保持が無意味になってきます。しかし戦力的にアリューシャン方面に割ける余力はすでになく、米軍の来襲が時間の問題となってきました。
 米軍は最初にアッツ島へ上陸してきました。米軍の得意技であるカエル飛びですね。守備が強固そうな拠点は占領せずに孤立化させる手です。キスカを孤立させれば、補給が得られない守備隊など戦力として無視できるからです。

 南方のソロモン諸島でも、守備が強固であると思われていたラバウルをあえて占領せず孤立化させたのも同じ考え方です。
 むしろ米海軍の泊地として基地化できるような島は積極的に攻め、そこを根城に次の拠点を狙っていくわけですね。

 アッツ島守備隊2,665名は、上陸した11,000名の米軍に対して約2週間に渡って戦い、全員戦死。いわゆる玉砕です。
 どう考えても全滅以外のなにものでもありませんが、それを「玉砕」という言葉で当時の日本は美化したわけです。「瓦となって朽ちるより玉となって見事に砕けよう」という滅びの美学ですな。現実を言葉のイメージで誤魔化す。そういうことです。
 アッツ島が玉砕第1号となり、その後延々と続く玉砕の嚆矢になりました。また、米軍としては、弱兵力のはずの日本軍が意外に強烈に反撃してくることを知り、その後の上陸作戦に影響を与えたといいます。

 さて、アッツ島を占領されて完全孤立化したキスカ島守備隊。どう考えてもアッツ島と同じ運命が待ち構えているとしか思えません。
 アッツよりも多いとはいえ、たかが6,000名余りの守備隊で、しかも重火器は少なく補給が途絶えがちの状況です。キスカ島の運命や如何に?

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コメント

早く続きを書くように。

投稿: エンゾー | 2010年3月27日 (土) 12:17

がんばって書いてみました。

まだ続くけど(^^ゞ

投稿: ビヨ | 2010年3月27日 (土) 21:42

いきなりで申し訳ありませんが、「キスカ」記事を借ります。

勝手に申し訳ありません。
MIXIにて載せたいと思います。http://mixi.jp/home.pl?from=global

投稿: nekokuro | 2012年8月 2日 (木) 15:52

裏取りしてる内容ではなく、あいまいなところがある内容ですよ?
ご自分でお調べになって書かれることをオススメします。

投稿: ビヨ | 2012年8月 2日 (木) 17:52

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