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内陸線存続に向けて

 内陸線の存続が決まったよ。といっても期限付きだけど。

 県知事と地元自治体の長(内陸線は三セクなので社長兼務)が協議して、とりあえず3年後の努力目標を決定したらしい。
 それもありがちな無理な数値設定ではなく、このくらいなら達成できるかもしんないという線に置かれている。本気で存続に賭けてるな、と感じ、よーしよーしと唸ってる私である。

 地方における鉄道存続というのはどんどん難しくなっていく世の中であり、公共交通ネットワーク全体がヤバい。
 田舎は自家用車利用が基本の生活に移行してしまってるというのに、高齢化が公共交通機関を必要としている。

 ウチのオフクロなどは、次回の運転免許更新時に免許証を返上しようかなどと口走っている。おのれの肉体の衰退にクルマの運転に自信がなくなってきてるのだった。
 かといってクルマがないと買い物ひとつできない。それが日本の田舎での当たり前であって、ガソリンの高騰と冬場の灯油の高騰は雪国の年寄りに重くのしかかる課題なのだ。

 では公共交通機関を充実させたらいいと都会にお住まう方は考えるだろうが、日本における人口密度というのは、首都圏が異常に過密しているだけであって、地方じゃ桁がふたつくらい密度が違う。

 以前に書いたが、秋田市内でとりあえずチラシを新聞に折り込むとする。秋田市全域ではなく、市街地を広範囲にカバーするにせよ、3万部を刷る必要はない。
 業種や営業規模にもよるが、小さな店なら2万部刷って、2千部を店頭に置いてあとは折り込みというくらいで足りると思われる。広範囲と考えても2万5千前後くらいが適量ではあるまいか。

 ところが東京じゃ3万部刷っても半径3km内に折り込みをできない(中野区の場合)。秋田市といえども人口30万人超の都市で、人口だけに限れば東北有数の都市なのである。
 それでも人口密度感覚は、チラシを半径15km圏内に折り込むのと都会で半径3km圏内に折り込むのが同じくらいの量なのだ。

 これは採算を考えねばならない事業なら業種問わずのことで、公共交通機関も同じなのである。赤字をタレ流してでも運営できるのは官営と三セクくらいのものだ。
 前に「写真業界の衰退は田舎から」と書いたのもまったく同じ理由で、人口密度、すなわち商圏内の利用者数が都会よりも少ないので、衰退してくると採算を割るラインが時間的に早く来ちゃうということである。

 客のニーズというのは日本国内なら都会でも地方でもそんなに変わらない。その顧客のニーズというのは商圏内の人口にパーセントを掛けることで導き出され、パーセントが一定なら分母が大きいほど分子は大きくなる。
 30万都市と100万都市を単純に比較した場合、仮にニーズが1%だとしよう。30万都市なら潜在顧客は3千人。100万都市なら1万人だ。
 ニーズの変動によってパーセンテージが下がった場合、その店の採算ラインの想定顧客数が1千人だとするなら、ニーズが想定時より6割強減ったとすると、30万都市だとヤバい。けれど100万都市ならまだ3千人をキープできてる。

 上記は単純計算でしかないが、基本的な考え方はこれである。商圏の範囲の設定と、想定顧客数によって設定する店舗の規模。これは単純な算数だ。
 店舗を構えなくても、利益を出そうと考える商売なら避けては通れない考え方であり、利益率が一定だとするなら分母が大きければ得られる数字は大きくなるので、チェーン店化という道になる。窓口がたくさんあると率は一定でも利益金額は大きくなる。

 閑話休題。地方における公共交通機関というのは慈善事業に近いノリがあり、クルマを持たない人の移動手段がなくなった際に起きる静かなパニックは、田舎で暮らす人間なら誰でも容易に想像できる。
 過疎化は進行し、限界集落と目される集落は片っ端から廃村と化す。いくらか暮らしやすいかと30万都市へ引っ越してみても、家賃が高くて都市周辺部で暮らすことになろう。
 ところが都市周辺部でさえ公共交通機関の衰退は激しく、日々の食事のための買い物すらままならないと気がつく。
 安い店を探して通っても、その出費には常に一定のバス代が載ってくる。私のような性格なら、単価計算した際にバス代を載せることを矛盾に感じるであろう。

 目先の話なら、クルマがなければ生活ができない田舎の老人をどうフォローするかという話になるだろうが、本質はそんな表面的な部分にはない。
 もはや完全官営にして住民サーピスのためなら赤字もぶっちぎるような勢いを要求されているのが現在の田舎だ。住民のためなら税金で補填します。

 でも高齢化が加速度的に進むと、年金暮らしばかりじゃ税収は期待できず悪循環。だからこそ求められているのが、老齢であっても参加できる農業公社であり、高付加価値産物なのである。
 付加価値が大きいなら大量に生産することは単価を下げることになるのでむしろ不利。ヨイヨイのジジイやババアでも耕作可能な面積の畑があるなら、少量生産でも年金プラスαになる。それで成功してる集落も県内にあるのだ。

 話が思いっきりズレてしまったが、田舎における公共交通機関の確保という話題は、どうしても高齢化と税収確保の二つを避けては通れない話題なのである。
 公共交通機関の維持には税金と似たところがあって、必要なのは頭数なのだ。高齢化が避けられないなら、まずは頭数の確保に腐心せねばなるまい。

 三セク鉄道の存続とは、単に鉄道だけの単純な話ではなく、地域住民を繁栄させることまで含めたかなり立体的な話なのであるよ。

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コメント

おお、勉強になるなぁ。
このお話は良いですよ!
とても判りやすいし。
うーむ、ナイスですっ!

投稿: ぴゅんぴゅん | 2008年8月18日 (月) 22:17

いつもわかりにくくてすいません(/ω\)

投稿: ビヨ | 2008年8月19日 (火) 18:24

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